湿気を含んだ生ぬるい風が窓から吹き込む。

玄関の扉が開いて通気がよくなったから吹き込んで来たみたい。

すっかり夏になったなぁと感じながら誰が帰ってきたんだろうと玄関に向かう。


「うっざ……」


靴を脱いで開口一番、ため息混じりに鬱憤を吐いたのは刹那。

どうしたんだろ、こんなに機嫌悪いの珍しいな。


「何かあった?」

「聞いてよ永遠〜、じいちゃんがうざい」

「……ああ、そういうこと」


聞いて納得した。だってうちのおじいちゃんは『普通のおじいちゃん』じゃないから。

おじいちゃんは荒瀬組の先代組長でとても気難しい性格。

その気難しいおじいちゃんに気に入られている刹那は過剰な期待をされて困ってるみたい。


「俺はヤクザに興味ないって何回言わせたら分かるんだよ、あー、腹立つ」

「おじいちゃん刹那大好きだもんね」

「『時期若頭候補』にね?じいちゃんが期待してんのは俺じゃない。
絆いるからいいのに。正式に若頭襲名したじゃん」


愚痴が止まらない刹那が百面相でおもしろい。

愚痴ってる最中に水差したらさすがに怒られそうだから言わないけど。