狼姫と野獣

「そうなの?」

「家じゃ優しかったろ?でもケンカは容赦ねーのよ。相手が気絶するまで殴るし平気で骨折るし」

「……想像できない」

「だろーね、調子いい時は人をバカスカ殴ったりしねえし。
ま、カリスマ性があるから多少荒れてても後ろはついて来んのよ。
俺はちょっと心配だけど」


妹を甲斐甲斐しくお世話する快が、暴力的な人間になったなんて信じられない。

野獣と呼ばれる所以(ゆえん)はそこからなのかな。

でも、私はきっとそれを目の当たりにするまで幻想を抱き続けるんだ。

大切な初恋の人だから。


「……どっちが本当のあいつなんだろうね」

「分かんないね」


首をかしげたら桐谷は真似して「ねー?」と笑う。

その時、一台の高級車がコンビニの駐車場に入ってきた。

桐谷は目を凝らし運転席に誰が座っているか確認する。

そしてそれが力さんだと確信した瞬間、アイス片手にガッツポーズをした。

……もしかして私と話してたのって力さんと会えると思ったから?

なーんだ、現金なヤツ。優しい人だと思って損した。