狼姫と野獣

「緊張感なさすぎなんだよ、そろそろ抗争だってのに」


桐谷は私にだけ聞こえる声でそう言った。

刹那の言った通り本当に抗争するつもりなんだ。


「誰か迎えに来んの?」

「あ、うん。コンビニで待ち合わせするつもりで来たんだけど……」

「お前らさっさと帰れ。そろそろお迎え来るらしいから荒瀬組にシメられんぞ」


私に向いていた顔を男の子たちに向けると、彼らはすぐに慌てふためいてバイクに乗り去っていった。

そんなにヤクザって怖い?……怖いか。


「ごめんな?助けに入ったのが快じゃなくて」


男の子たちがいなくなると桐谷はいつもの調子でからかってきた。


「別に、それよりその格好何?」

特服(とっぷく)だよ、今日集会だったから」

「集会って……暴走族の?」

「そそ、抗争前の決起集会」


道理で皆同じ格好してると思った。

けど、今回ばかりは本当に心配。


「……死なないでね」

「ウケる俺に心配してんの?惚れちゃうからやめて〜」


真面目に伝えたのにいつも通り流される。

もどかしいな、私にお兄ちゃんや刹那みたいなカリスマ性があればもっと心に響く言葉が思いつくのに。