狼姫と野獣





「永遠、怒ってる?」



ぼーっと窓の外を眺めていたら、刹那が顔色を疑うような声で質問してきた。



「なんで?もう怒ってないよ」

「はー、焦った。ほら、永遠って怒ると無言になるじゃん。
今朝のことまだ怒ってんのかと思って」

「あれは確かにイラッとした。唯を盗ろうなんて性格悪すぎ」



怒るのは疲れるから嫌い。

だけど人のものを盗ることだけは許せない。

こう思うのは、たぶんお父さんの遺伝子もあると思う。

お父さんは独占欲が強い人だ。

特にお母さんが大好きで、私たち家族以外がお母さんに関わるとすごく嫌がる。

そういうお父さんの独占欲の強いところ、私はちょっと継いでいるみたい。



「ごめんって、もうしない。唯ちゃんかわいいけどガード固いし」

「あと、刹那のことタイプじゃないって言ってた。
力さんみたいな人がいいって」

「マジ?じゃあ最初っから脈ナシじゃん。
俺と力さんじゃタイプ180度違うし」



「ざーんねん」と呟く刹那は全く残念がってない。

チャラ男は苦手だからこれ以上刹那がチャラくならないようにと心の中で祈った。