快のバイクの後ろに乗って実家に戻る。

帰るのが名残惜しいと思うくらい楽しい時間だった。

ゆっくり30分くらいかけて実家の近くに着く。

私を降ろしててくれた快はしばらくその場に留まっていたから勇気をだして声をかけた。


「あの、わがままに付き合ってくれてありがとう」

「気まぐれだから別にいいって」

「また会える?」

「分かんねえ」

「そっか」


また会える可能性は低いかな。

ダメならせめて笑顔で挨拶しよう、そう思って顔を上げたら快は不満気な顔をしていた。


「無理に笑うのやめろ」

「……ごめん」

「そうじゃなくて……永遠はうまいもの食って笑ってる方がいい」


怒られてるのが誤解だったと気がついてもう一度しっかり快の顔を見つめる。


「じゃあ、またごはん作って!」

「……俺の気が乗れば」


別れ際のわがままを快は受け止めてくれた。

そしてかすかに口角が上がったように見えた。

驚いて立ち尽くす私に快は「いいから早く帰れ」と家の方向に指をさす。

私は「じゃあね」とだけ呟いて家路に着いた。

笑顔で挨拶するはずが心臓がうるさくてそれどころじゃない。

家に着く直前、振り返ると快はまだ元いた場所から私を見ていた。