狼姫と野獣

「なんで立ち止まってんだよ」

「帰りたくない。もう限界……」


これまであった嫌なこと、いろいろ思い出してまた涙がこぼれた。


「あの家に帰りたくない、今日は家族がいないから余計にいたくない」

「は?」

「だってあの人たちは私のこと荒瀬に必要ないって言ってた。
仕事ばっかり増やすって、絆や刹那みたいには“使えない”って!」

「……」

「ずっと家族がいるから我慢してた。だけどもう嫌だ……帰りたくない」


地面に膝をついて、嗚咽混じりに必死に訴えた。

何してるんだろう私、快に言ったってどうしようもないのに。

ましてや荒瀬組を恨んでる快に言ったって何も解決しない。

うつむくとノワールは不安そうな顔で私を見上げている。


「……立て」


快は私の腕を掴んで立ち上がらせる。

手に込められた強い力に驚いて正気に戻る。


「今度は逃げねえようにちゃんと戸締りしろよ」

「……」

「とりあえずここで待ってるから、ノワールを家の中に入れたら戻ってこい」

「戻る……?」


これでお別れだと思ったのに、戻ってこいってどういう意味?