狼姫と野獣

「こいつ、なんで逃げ出した?」

「刹那が部屋の窓を開けっ放しにしてて……」

「帰ったら殴ってやれあいつ」

「そんなことはしないけど、お父さんに告げ口しちゃおうかな」

「……それは刹那に同情する」


全然会ってなかったのに普通に会話できてるから内心ビックリしてる。

前を歩いていた快は徐々に歩くスピードを落として私の横を歩いてくれた。


「快はなんでこんなところに?」

「……現実逃避」

「え?」

「単車で走りに来て、コンビニで休憩してたらネコが足元に寄ってきた。
よく見たら首輪してたから、首輪に書いてある住所まで送り届けてやろうと思って」

「……ありがとう」

「まさかお前のネコだとは思わなかったけど」


私の飼い猫だと分かってたら送り届けてくれなかったかな。

でも快は優しいからたぶんそんなことはしない。


「ほら、飼い主に抱っこしてもらえ」

「うん、おいでノワール」

「じゃあな。この辺だろ、家」


あっという間に家の近くまで来て、快はノワールを私に預けた。

だけど足が動かない。

嫌だ、この先に行きたくない。