狼姫と野獣

夕暮れ時の暗がりの中顔を上げる。

そんなはずない、快が私のこと助けてくれるはずがない。

だけど見上げた先にあった顔は間違いなく快だった。


「こんな時間に何してんだ」

「……ノワールがいなくなって、探してた」

「独りで?」


これは夢?

信じられない出会いにひとり混乱する。

だけど呆れたような深いため息に、これは現実だとひしひし伝わった。


「お前、学習しろよ」

「……」

「ヤクザの娘だろ、勝手に出歩くな」


突き放されるような言葉。

限界ギリギリだった私はじわっと目頭が熱くなって涙がこぼれた。

その通りだけど、そんな言い方しなくていいのに。


「快には関係ない。ノワール、こっちに渡して」


泣き出してしまう自分が悔しくて平気なフリをする。

だけど声が震えてしまって、それに気づいた快は何も言わずノワールを抱えたまま明るい場所へ行く。

怖い、また何か言われる?