狼姫と野獣

「っ……」


暗がりで聞こえた低い男の声に恐怖で動けなくなる。

振り向くのをためらったその時「にゃあ」と呑気なネコの鳴き声がした。


「ノワール!?」


この甘えた鳴き声、ノワールだ。

振り返ったら男の人が1人立っていて、その腕の中には黒猫が抱かれている。


「あ、あの、捕まえていただいてありがとうございます。その子私の飼い猫なんです!」

「……知ってる」


駆け寄ったその声には聞き覚えがあった。





「………快?」