ずいぶん前から分かってた。

私の存在価値はこの場所にないって。


「ノワール!」


お父さんにもお母さんにも言えない、そんな疎外感に苛まれる中、ノワールだけが私の味方だった。

ノワールは泣いて眠る私のそばにいてくれた。

寂しい時、それに勘づいていつも以上に甘えてくれた。

そうすると私が笑うから。笑う私をノワールはじっと見ていた。


まるで走馬灯みたいな思い出。

でも思い出にしたくないから必死に探し回った。

まだ一緒にいたいよ、ノワール。

ダメな飼い主でごめんね。


「……ダメだ、ここにもいない」


スマホを見ると捜索してから1時間が過ぎている。

でも組員は誰も私のスマホに連絡してこない。

敷地の至る所にある防犯カメラには映ってるはずだけど、酔っ払って誰も確認してないんだろうな。

……このまま私がいなくなったら、あの人たちどうするんだろう。

こんなこと考えてる場合じゃない、探さなきゃ。


「おい」


人気のない暗い路地裏。後ろから誰かに声をかけられた。