狼姫と野獣

うんうんと頷きながらネコのクッキーを口に運ぶ。

その時、倖真が机に置いたスマホから着信音が流れてきた。

倖真は「母さんからだ」と言って少し私たちから距離をとって通話を始めた。

なんとなく倖真の後ろ姿を見てたら、隣に座る涼風ちゃんが私の肩を叩いた。

振り返ると涼風ちゃんの大きな瞳とかち合った。


「ん、なに涼風ちゃん」

「……あのね、永遠に相談があるの」

「なになに?」


その様子を見逃さなかった倖真は通話しながらこっちに来た。


「ん、どうした涼風」

「お兄ちゃんは来ないで、お母さんと電話しててよ!」

「え……」

「あっはは!落ち込みすぎだろ倖真」


慌てて突き放す妹に立ち尽くす倖真。

そしてそれを笑う刹那。

倖真は一瞬刹那を睨んだけど、抜け殻のようにテーブルを離れてソファの方に向かった。