狼姫と野獣





「だからぁ、散々言ってんだろ?しつこいんだけど」



快と一緒に駐車場へ向かう途中で1台の原付が見えた。

その近くから聞こえてきた刹那の声。

あ、これ……怒ってる時の声だ。



「そんなこと言わずさぁ、考えといてよ。
また来るから」

「二度と来んな。今度来たらケーサツに通報する」

「あはは、それはやだ」



見えてきたのは、腕を組んで怒っている刹那と身体を左右に揺らしながらニタニタ笑う金髪の人。

背格好からしてたぶん、同い年くらいだと思う。

私たちが近づいてくる気配がするとぐりんと首を回してこっちを見た。

組員で慣れてるはずなのに、その少年の目は少し怖かった。



「おっ、さっそく舎弟と彼女は作ったの?やるじゃん」

「どっちも大ハズレだわ。友達と双子の姉弟。
……快、永遠連れてきてくれてありがと」



刹那はイライラしてる感情を押し殺して快に手を振り笑顔になる。



「じゃあね未来の若頭。
……あれ、若頭って『絆』の方?まあいいや、じゃあね」

「あ?……チッ」



だけど余計なことを言われたから思いっきり睨んで舌打ちをした。

少年は何食わぬ顔で原付に乗って校門から堂々と出ていった。



「あーー、うっざ……」

「あれ、何?」

「黒帝の勧誘」

「コクテイ?」

「関東No.1の暴走族だよ。
俺が『荒瀬組組長の息子』だからって最近勧誘してくんの。
親がヤクザでも子どもは関係ないっての!
マジでああいう奴ら滅べばいいのに」



ヤクザの息子となると、暴走族から勧誘されるんだ。

特に刹那は私には無い頭の良さとカリスマ性があるから魅力的なんだろうな。

どっちにしても、私には縁のない世界。