きっかけは流星群のニュースだった。星が綺麗な夜は、蒸し暑い夏だろうと凍えるような風が吹く冬だろうと、彼はいつも外に出て空を眺めていたから、私は天体観測が趣味なのだと思い込んでいたのだった。

「クリスマスの頃に大流星群が見られるそうですね。先生」
「ああ。楽しみだよ。今年こそ願いが叶うかもしれないからね」
「願いですか?」
「そうだ。僕の願い。もしも願いが叶ったら、きみともお別れだ」

 何を言っているのかわからなかった。狂ってしまったのかと、一瞬だけ疑ったが、そんな様子はなかった。やがて彼は、静かな声で教えてくれた。

 まだ幼い頃、道端で拾った青く光る石と不思議な女の子のこと。その子に恋してしまった彼は、別れの時が来ても諦めきれず、帰っちゃやだと駄々をこねる。女の子のほうもいつしか彼を好きになっていた。でも自分の世界へ帰らなければならない。悩んだ挙句、女の子は彼に向かってこんな約束をする。

 いつか満点の星が降る夜に、必ず迎えに来る。だから忘れないで待っていて欲しいと。

 青い石はその女の子の大事な宝物だった。その石を彼に差し出し、その時まで大切にして欲しいと言葉を残して、女の子は消えた。