ビターチョコレート色のブラウスと、クランベリーみたいな赤いスカートがドッキングしたワンピースは、アンティークのような色合いでこれからやってくる秋の装いにぴったりだ。
 三層レースのペチコートを履いて裾にボリュームを出したら、綺麗なAラインを描くに違いない。

 いつもの両サイドにわけてゆるく編んでいる髪も合うが、きっちりまとめてアップにしたら優等生風でいかにも読書の秋! という感じになりそうだ。どちらにするか、実に悩ましい問題である。
 服に合わせるのは、キャメルブラウンのレースアップブーツ。少しヒールがあるから、慣れないピケはもしかしたら歩きづらいかもしれない。

「どうしよう、ノージー」

 そう言って半泣きですがってきたピケの手を取って、二人は色づき始めた並木道を、腕を組んで歩くのだ──とそこまで妄想して、ノージーの意識はイネスの声に引き戻された。