「説明は以上です」

 ノージーはそう言うと、ゆっくりとピケの手を放した。
 衝撃の連続すぎて、ピケの頭はグルグルと回っている。

(まさかノージーがガルニール卿を捕まえてくるなんて、想像できるわけがないじゃない)

 とはいえ、聞いたあとになってみればネコ(ノージー)ねずみ(ガルニール)を捕らえることに至極納得がいく。
 だって彼は猫だから。
 そして彼は、大嫌いなねずみもピケのためを思えばいくらでも狩ってくる。

(ノージーを助けるために、イネス様を裏切る覚悟をしたのに)

 なけなしの覚悟が、風船のように萎んでいく。
 ノージーを助けるために、イネスを裏切るつもりだった。
 なのにピケは、一番安全なところでのうのうと守られていただけ。
 情けないと思う反面、もうイネスを裏切らなくて良いのだという安心感が湧いてくる。

(守られるだけなんて嫌だと思ってた。でも……)