人族には知られていない話だが、魔獣は大きく二つに分けることができる。

 理性がある魔獣と、理性がない魔獣だ。

 人族を襲うのは、そのほとんどが理性がない魔獣である。とはいえ、人族からしてみれば、理性の有無など分かりようもない。そのため、この事実が周知されていないのである。
 理性がある魔獣はそれを理解しているから、決して人族の前へ姿を現さない。

「ただし、例外はあります」

「あなたがその例外だっていうの?」

「僕は魔の森できみに拾われた身なので、正確には同じではないですけれど……この姿になった理由は、そのあたりに起因しています」

「美女になった理由……?」

 ポツリとつぶやかれた言葉に、ノージーが「おやおや」と眉を上げた。

「美女、ですか。なるほど。ピケの目には、僕が美女に見えているわけですね」

 にんまりと意地悪く笑うノージーは、はぐらかそうとしているように見える。
 そうはいかない、とピケはわざと怖い顔をして睨んだが、彼は楽しげにクツクツ笑うだけだった。