最低最悪の選択だ。
 おそらく……いや、きっと。ノージーはピケを見放すだろう。

「失恋した獣人は消滅してしまう……じゃあ私は、ノージーも失ってしまうの?」

 そんなのは嫌だ、とピケは思った。

 出会った時、今にも死にそうだったノージー。寝る間も惜しんで世話をして、完治した時は嬉しかった。
 父の再婚でひどい扱いを受けても、ノージーがいてくれたから耐えることができた。ごはんをもらえなくておなかを鳴らしていたピケに分けてくれた小魚(エサ)の味は、忘れられない。

(やわらかく笑う顔が好き。恥ずかしいけれど、甘やかすみたいに名前を呼んでくれる声が好き。私さえ忘れていたような約束を大切に覚えてくれているところが好き。時々見せてくる雄っぽいところも……)

 走馬灯のように過っていく、ノージーとの思い出たち。
 胸にしまっていた大事な気持ちが、弾ける。
 消えてしまったらどうしようと思っていた気持ちは、消えるどころか増していくばかりで、とうとうピケの口から溢れ出た。