嫌な視線だ。
 義兄たちの視線とは違った意味で、悪寒が走る。
 スカートを手繰るように握り締めながら、ピケは目を閉じ、俯いた状態で耐えていた。

「君に話があるのだ」

 さきほどまでのさげすむような声音が、急に猫撫で声になる。
 何かをたくらんでいる。そう思うのに十分な変わりように、ピケはヒュッと息を飲んだ。

「話、ですか? 一体どんなお話でしょうか」

 口が勝手に笑みを浮かべる。
 笑いたくないのに、どうして笑ってしまうのだろう。
 怯えをごまかすため? それとも、媚びへつらって見逃してもらおうとでも思っているのだろうか。

(だとしても、こんな歪な笑みでは見逃してもらえないでしょうね)

 しかし、ガルニールはピケが不敵な笑みを浮かべているように見えたらしい。
 憤慨したようにふんっと粗く鼻息を吐くと、

「どういう立場なのか、まだわかっていないようだな?」

 と言った。