「かわいいですねぇ、ピケは。混乱していても、かわいい。トランクのこともそうだけれど、僕のことも警戒しないと駄目なのに。ああ、なんてかわいいのでしょう。ほら、よぉく見て? この丸みを帯びたフワフワの耳。触り心地抜群のモフモフの尻尾。そしてきみとおんなじ緑色の目。あなたが大好きなノージーとそっくりだと思いませんか?」

 伸びてきた尻尾がピケの頰に押し当てられる。
 先が少しだけ曲がっているかぎ尻尾は、ノージーの特徴に違いない。

 だがそれ以上に、ピケをからかい、いじわるそうに目を細めながら、その実、愛情に満ちた視線で見つめてくるのは愛猫ノージーとそっくりだ。
 彼女の勘が告げている。

(こんな目で私を見てくるのは、あの子だけよ)