美人が怒ると尋常でない量の色気が付加されることを、ピケは初めて知った。
 こういう笑みを、蠱惑的と呼ぶのだろう。
 目が釘付けになって、離せない。言われるがままに、従ってしまいたくなる。

 ノージーの笑顔を見て、安心したからだろうか。
 こんな場面だというのに、眠い時のように頭がぼんやりとしてくる。

「ノージー……わたし……」

「大丈夫。僕がなんとかしますから」

「う、ん……」

 眠そうに瞬きを繰り返したあと、ピケはまぶたをおろした。
 おとなしく身を任せてくるピケに、ノージーは満足そうに唇の端を引き上げる。
 それから、目の前の不埒者を排除すべく、再び威嚇を始めた。