結婚した次の日に同盟国の人質にされました!

「む……。ハイネ様、この母娘と知り合いなのですか?」

(母娘って、私とマルゴットの事!? 同じ歳なのに失礼な!)

 バシリーと思われる声も背後から聞こえてくる。あまりに失礼な物言いに振り返りそうになるが、マルゴットにガシリと背中を固定され、阻止された。

「ここで振り返ったら相手の思うツボです。知らないふりをしましょう」

 ハッとしてマルゴットの顔を覗き込むと、修羅場か何かの時の様に鋭い表情をしている。

(知らないフリって、もうバレバレなんじゃ……?)

「お母様! あの熊をご覧になってください! とても投げ飛ばしやすそうに思えませんか!」

「え、ええそうね。可愛いマル……マル……マルゴーよ」

「マルマルマル!?」

「ちょっとどもっただけよ。ホホホ……」

 変な所に食いついて来たマルゴットに汗を流しながら、演技に付き合う。

「プ……ククク」

 背後の男は我慢しきれないとばかりに吹き出し、笑い始めたようだ。

(やっぱりバレてたのね)

 まだ演技を続けようとするマルゴットの頰をつつき、やめさせる。

「バシリー……いい見世物だったな。プクク……」

 後ろを振り返ればハイネが腹を抱えて、自らの膝まで叩いて笑っていた。バシリーまでもが口を震わせているようだ。

「ジル様、一体その恰好は……?」

「これは、その……。私のお気に入りの服なのですわ」

 モリッツが咎められてはまずいため、ジルは咄嗟に嘘を吐き、その場でクルリと回って見せた。

「アンタ……、その恰好だと40代とか50代にしか見えないよ」

 同年代の、しかも見た目が最上級なハイネに年増に見えると言われ、ジルはショックで倒れそうになる。いくらなんでもハッキリ言いすぎなんじゃないだろうか?