「そしたら美山さんたちに何言われても気にならなくなりました。だって私、今あの人達より絶対仕事してますもん」
「あははっ! それはまず間違いないな」

優しく髪を梳くようにして撫でられていた頭を、突然くしゃくしゃに撫で回される。

サイドを編み込みにしてハーフアップにしていた髪の毛は、もうルーズという言葉を超えてぐちゃぐちゃに崩れてしまっていて、今さら乱されても怒るに怒れない。

「そんな人達の言葉にいちいち傷付いている暇がなくなったんです。仕事を頑張って、逃げていた人付き合いもちゃんとして、自分に自信をつけないと翔さんの隣にはいられないって」
「あすか」
「あの時、はっきり自覚しました。翔さんが、好きって」

翔さんが好き。

ようやく口に出して気持ちを告げると、今まで押し留めていたのが堰を切ったように溢れ出す。

「すき、すきです。翔さんが好き」

恥ずかしさに頭がクラクラするけど、そんなこと構わずに気持ちをぶつけたい。

もう遠慮はしなくていいんだ。勘違いだって、自惚れじゃないんだって、ちゃんとそう実感したくて目の前の翔さんに縋り付く。

「翔さん、すき。す……っんん」

何度目かの告白は突然重ねられた唇に阻まれ最後まで言い切ることが出来なかった。

「バカ。煽ってくんな」
「……翔さん」
「誰と比べなくていい。そのままのお前でいいから」
「でも私、全然可愛くなくて」
「それは社内だけじゃなく、日本中の女からブーイングがくるんじゃないか?」
「もう! 茶化さないでください!」

姿形のことを言ってるわけじゃない。わかってるくせに本当に意地悪だ。