土曜日。
専務の誕生日。
そして、お父様の命日。

朝から母屋にはたくさんの人が出入りしていて、私も少しお手伝いをした。
普段着にエプロン姿の私はお手伝いさんと見分けがつかず、誰も声をかける人はいない。
専務もお客さんの対応に追われていた。

夕方。
気がつくと専務の姿はなくなっていた。

「やっぱり逃げ出したのね」
希未ちゃんが奥様に声をかけている。

「放っておいてあげなさい」
奥様も分かっている見たい。

簡単に片付けを手伝ったあと、私は離れに戻った。



シャワーを浴びて寝ようかとも思ったけれど、専務が今どんな気持ちでいるのかと思ったら寝付けそうもない。
考え込んでいるうちに、あの店のカクテルが飲みたくなった。
マスターのチョイスしてくれるカクテルはその時に気分にピッタリで、飲んだら寝られる気がする。