午前7時半、競技会場の都立高校のもより駅に集合。
 グループメッセが入る前にわたしの当日予定はもう決まっていた。
 なにしろ弟が参加する大会だ。
 準々決勝からは男女同会場になる決戦の場に、わたしも出向くなら姉として荷物持ちくらいはしてあげないと。

『任せてよ』
 どんと胸を叩いたわたしに二紀(にき)がなぜか困ったふうに眉毛を寄せて、見せてくれたのはネットの時刻表。
 なんとその私鉄の駅は、わたしたちの家からは地図ならまっすぐなのに、電車を利用するとJRで新宿駅へ出て、あっちへ行って、こっちへ行って、私鉄に乗り換えて…というやつで。
 示されていた所要時間は1時間。
『まぁじぃ……』とため息をついたら、二紀が『夕クシーで行くし』と言ってケータイを操作しながら自室に消えた。
 早起きがイヤだから、こういうときは抜群の行動力だね、とあきれていたのに、朝おきたらもう二紀はランニングに出ていて。
 わたしと母さんは、新しく用意した保冷バッグに、おすそわけもできるようにスポーツドリンクと水のペットボトルをつめて、マイボトルにはうがいにも使える熱い緑茶、待ち時間のおやつにキャラメルと、初等部の運動会の朝以来のてんやわんや。
『二紀が来てって言うまで、ママは観戦には行かないほうがいいのよね』
 父さんの大きなボストンバッグに用意したものをつめながら、母さんがさみしそうにつぶやいて。
一路(いちろ)。任せたわ』って。