獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 ……もしかすると、マクシミリアン様はお疲れなのかもしれない。
 心なしか彼の尻尾もショボンとして張りがなく、その動きも緩慢だ。
「あの、もしよかったらマクシミリアン様の尻尾を、このハーブスプレーを使ってブラッシングさせていただけないでしょうか? ちょうどポケットに出来上がったばかりのスプレーも入れていますので!」
「なに、尻尾をマッサージだと?」
「はい。このハーブスプレーは猫たちの毛を清潔にして艶やかに保つために私が配合したものなんですが、使用したハーブには心をリラックスさせる効果もあります。ブラシを掛けながらマッサージすると癒されるはずです」
 気づいた時には、ポケットから手のひらサイズのスプレーボトルを取り出しながら提案していた。
 この時、私の胸に彼の尻尾に触りたいという下心は微塵もなかった。ただ、疲れた様子のマクシミリアン様を癒してあげたい、その一心だった。
「……ほう」
 マクシミリアン様はスプレーボトルを興味深そうに見つめ、顎に手をあてる仕草をして、考え込むように低く頷いた。