私には、仕事に戻ると言っていたはずのサリーがその足で午後半休を申請しに行ったことなど知るよしもなかった。
その日の晩も、私はいつも通り政務室から戻ってきたマクシミリアン様のマントを受け取った。
「おかえりなさいませ、お疲れ様でした」
「ああ。……ん?」
受け取ったマントを衣桁に掛けようと踵を返しかけたところで、突然マクシミリアン様が私に鼻先を寄せた。そのまま私の髪と言わず腕と言わず、至るところでスンスンと鼻をヒクつかせる。
「どうかなさいましたか!?」
「微かにだが、清涼感のあるいい香りがする」
「あ! それでしたらハーブスプレーを作っていたので、その移り香ですね。すみません、きちんと着替えておくべきでした」
夕方の休憩時間に底を突きかけていたハーブスプレーを作っていたのだが、煮詰める過程で着衣などに匂いが移ってしまったようだ。
「なに、謝ることなどない。強張っていた体がほぐれるようだ」
マクシミリアン様はそう言って、私の首筋のあたりに鼻先を寄せたままスゥっと大きく吸い込んだ。
その日の晩も、私はいつも通り政務室から戻ってきたマクシミリアン様のマントを受け取った。
「おかえりなさいませ、お疲れ様でした」
「ああ。……ん?」
受け取ったマントを衣桁に掛けようと踵を返しかけたところで、突然マクシミリアン様が私に鼻先を寄せた。そのまま私の髪と言わず腕と言わず、至るところでスンスンと鼻をヒクつかせる。
「どうかなさいましたか!?」
「微かにだが、清涼感のあるいい香りがする」
「あ! それでしたらハーブスプレーを作っていたので、その移り香ですね。すみません、きちんと着替えておくべきでした」
夕方の休憩時間に底を突きかけていたハーブスプレーを作っていたのだが、煮詰める過程で着衣などに匂いが移ってしまったようだ。
「なに、謝ることなどない。強張っていた体がほぐれるようだ」
マクシミリアン様はそう言って、私の首筋のあたりに鼻先を寄せたままスゥっと大きく吸い込んだ。



