獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「それからサリー、さっきの『ノミが住処とするのは野良猫』ってやつだけど、皇宮周辺の野良猫にもうノミはいないよ」
「え?」
 謎の悪寒を若干訝しみながら私が野良猫の現状について説明すれば、サリーはキョトンとした顔で首を傾げる。
「せっかくの毛皮をボソつかせて不衛生にしているのを見過ごせなくてね。自作のノミ除けハーブを使ってブラッシングをしてやったんだ。彼らの毛が今では驚くほど艶やかになっているから、今度撫でてごらん」
「まぁ! ぜひ、折を見て撫でてみますわ! ……あら。けれど、そうなるとノミは実家近くでたむろする野良猫たちから拝借することになりますわね」
「ごめん、後半がよく聞き取れなくて。なにか言ったかい?」
 再び走った悪寒に身震いしつつ尋ねる。
「いえいえ! 独り言ですのでお構いなく。それより、私そろそろ仕事に戻りますわ。聞かせてくださってありがとう。では、ごきげんよう」
 サリーはそう言ってスックと席を立つと、足早に談話室を出ていった。
「ああ、またねサリー」