獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「それに私、先ほど大きな声で叫んだせいか喉がイガイガしてしていけませんの。たしか、お急ぎではないとおっしゃっておられましたわね? これからちょうど休憩に入るところだったので、ぜひお茶にお付き合いくださいませ」
 ……前世も含め、私は思うのだ。
 女性たちは皆、妖精のごとく可愛いらしい。しかし妖精はその柔らかな笑みの下に、一本芯が通った強く逞しい心を持っている。
「ご一緒させていただこう」
 私の行動が原因で喉を潤したいと言われれば、同行を断ることは困難だ。
「はい!」
 もちろんマクシミリアン様の『耳なし』に触れるつもりは更々ないし、大臣らの発言についても具体的な内容を明かす気はない。それでも声を大にして話していい内容ではないから、私はサリーを伴って個室の談話室に向かった。
 建前と分かっていながら、一応、途中で食堂に寄ってふたり分のお茶も受け取った。