「僕の勘ぐり過ぎかもしれないが、皇太后様付きの仕事は少し大変そうだ。僕は下級貴族で、君に皇太后様付き女官というような名誉はあげられない。だけど、たとえば君の女官勤めが純粋な社会経験なら、僕の家族に事業で成功している者がいるから、そちらで秘書の仕事を紹介することもできるよ。とにかく、困った時は必ず力になる」
 櫃を受け取ったユリアは、こぼれ落ちそうなくらい目を見開いて私を見つめていた。
 幼さを残した童顔にピクピクと小さく揺れるモコフワの虎耳と尻尾まで加わった彼女は理性が破壊されそうな猛烈な可愛いらしさで、私は衝き動かされるようにやわらかそうな虎耳に手を伸ばした。
「……すごいな! やっぱりユリアの虎耳はモコモコだ」
 そっと手のひらで触れた虎耳は、見た目を裏切らないもふもふの感触を伝えてくれる。ユリアが重い櫃を抱えた状況を鑑み、丁寧に二、三度撫で、指の間を滑っていく極上のモフモフ質感を堪能すると、名残惜しくもスッと虎耳から手を引く。
「ありがとう、おかげで夢心地が体験できた」