こ、怖いっ! 私は思わず、ブルリと体を震わせた。
 私は六人姉妹の末っ子で上に五人の姉様たちがいる。二番目から五番目までの姉様は既に他家に嫁いでいたが、彼女らは皆、私にとても優しかった。
 しかし、いまだ生家に留まる長女のマリエーヌ姉様だけは何故か、昭和時代のスパルタ教師か!?ってレベルで私に厳しいのだ。
「そうよねぇ~」
 姉様に水を向けられた張本人であるお母様が、おっとりと口を開く。恐れおののく私を余所に、お母様に怯んだ様子はまるでない。
「私もね、男と性別を偽ったまま陛下の近習を務めさせるのはさすがにうまくないだろうと、この機会に性別を改めることを提案したのよ。けれどあの子は、頑として首を縦に振らない。モンターギュ家のためにあの子がひとり負担を背負い込み、犠牲になる状況など、私とて到底容認出来るものでは――」