俺の未来が、ヴィヴィアンによって明るく照らされていく。目の前の視界がクリアに開け、世界が鮮やかに色づきはじめる。積年の苦渋や劣等感、長く俺を苛んでいた引け目のようなものがスーッと霧散していくのを感じた。
「まぁ、そんなものだ」
 俺の心はかつてないくらい晴れやかだった。
 その時、ふいにある思いが脳裏を過ぎった。
「……惜しいことだ」
「え?」
 意図せず漏れた呟きに、ヴィヴィアンはキョトンとした顔をして首を傾げた。
「ヴィヴィアンよ、俺はお前のような考えを持つ女を妃に娶りたかったぞ」
 一瞬過ぎった思いを、わざと悪戯めかして告げる。
 するとヴィヴィアンは茹蛸のように顔を真っ赤に染め、目玉が落っこちそうなくらい目を見開いた。そのまま挙動不審にもじもじと身をくねらせる姿に、俺は思わず吹き出す。
「ははっ! ただの物の例えだろうに、おかしな奴だな」
「いや、あの……はい。すみません」
 ヴィヴィアンの反応を少し意外に思いつつ、手の中のターバンに目線を落とす。いつもなら人目を気にして、屋外で頭部を晒したままでいるなど絶対にあり得なかった。
 しかし今はすぐに巻く気にはなれず、髪をかき上げて風になびかせた。