誇らしげに差し出すヴィヴィアンから奪うようにターバンを取りあげて、噛みつくように叫ぶ。少し冷静に考えれば、真正面から向かい合った状態で今さら「見た」もなにもないのだが、それだけ俺の内心の動揺は激しかった。
「ええっと、それはお耳のことですか?」
 のんびりとしたヴィヴィアンの受け答えに、焦燥が募る。
 木の葉を優しく揺らしながら抜けていく爽やかな風も、今はもう心地よい静けさを与えてはくれない。重苦しい不快感が胸に渦を巻いていた。
「その通りだ! それ以外になにがあるというんだ!?」
 俺の勢いと語気の強さに、彼は驚いているようだった。
「賢帝と称えられ、持ち上げられている俺の実体はこれだ。……がっかりさせてしまったな」
 ヴィヴィアンを委縮させぬよう意識してトーンを下げ、自嘲気味に呟いた。
「マクシミリアン様、失礼ですが僕にはあなたの仰る『がっかり』の真意が皆目見当もつきません。だって、どこにもがっかりする要素なんてありませんよね?」
 ヴィヴィアンは俺を真っ直ぐに見つめ、静かに言葉を続ける。