「ぬあぁあぁあああ～、ヴィヴィアンさま～っ！　私はどこまででも、あなた様に付いてまいりますからね！　間違っても私に代わって他の侍女を重用したりしては、嫌でございますよ!?」
　私への独占欲と嫉妬心を滲ませて唇を尖らせる婆やの姿を前にして、愛しい思いが湧き上がる。
「もちろんだよ、婆や。僕の乳母で今は侍女頭として屋敷の一切合切を取り仕切ってくれている君以上に頼れる者などいるはずもない。これからも頼りにしているよ」
　婆やの顔がボンッと、茹蛸のように真っ赤に染まる。
　……ふふっ、なんて可愛いんだ。
　老いも若きもない、やはり女性は皆可愛いな。私は真っ赤な婆やの頬をツンツンとつつきながら微笑んだ。
　その時、婆やが閉め忘れていた扉の向こうから、射殺しそうな鋭いが眼光が私を射貫く。
　これはっ!!
「お母様、あのヴィヴィアンをマクシミリアン皇帝陛下の近習として皇宮に向かわせるなど、正気ですの？」
　私がビクンと肩を跳ねさせて振り返るのと同時、我がモンターギュ家の長女・マリエーヌ姉様の地を這うような声音が鼓膜を震わせる。