獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 どうやらマクシミリアン様もハミル殿下の帰宮を知らなかったようで、驚きと困惑を露わにしていた。
「一緒だよ。僕は連絡した方がいいって言ったんだけど、自分の城に帰るのに誰に報せをやることもないっておっしゃって。今頃、中庭のテラスにお茶を運ばせているんじゃないかな」
「……そうか。では、飲み終わった頃に挨拶に伺うとしよう」
 なんだろう。マクシミリアン様の口振りに、母親である皇太后様への壁や距離感のようなものを感じた。
「ねぇ兄様、この後って忙しい? 僕も兄様とヴィヴィアンと一緒にお茶会がしたいなぁ」
 ハミル殿下はスルリとマクシミリアン様の腕を取ると、甘えた声で上目遣いに尋ねる。ハミル殿下の喜びの感情を映し、尻尾も可愛らしくパタパタと左右に揺れている。
 ……うおっ!! なんっという女子力の高さ!? 本来の使い方でないのは百も承知だが、ここでハミル殿下のテクニックを称える言葉は「女子力」で間違いない。だって、こんなんされたら誰だって百発百中でイチコロだ!