獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 無理矢理己を納得させてみたものの動揺は治まらず、結局この日、俺は忙しさを大義名分に終日政務室に引き篭もり自室には戻らなかった。

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 ガブリエル国王の来訪が一週間後に迫り、皇宮内は日に日に慌ただしさを増していた。
 ところが忙しそうな周囲の面々とは対照的に、マクシミリアン様の身辺のお世話を担う私はひとり手持ち無沙汰だった。
 うーん。ここ最近のマクシミリアン様、なんかヘンなんだよなぁ~。
 そもそも、マクシミリアン様はあまり自室におられなくなった。ほとんどの時間を政務室に詰めているのだが、それはなんとなく忙しさだけが理由ではないような気がした。
 私はどこか余所余所しいマクシミリアン様の態度を思い返し、首を右に左に傾げながら彼の政務室に程近い廊下を歩いていた。
 ――ドンッ。
 っ!? 胸のあたりになにかがぶつかる衝撃で、余所事から意識が舞い戻る。慌てて目線を下げると、十歳くらいの少年が床に尻もちをついていた。