獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

「ああ。ガブリエル国王は実際にその目で我が国を見て、その上で国交正常化の最終判断をしたいということだ」
「わぁっ、それは楽しみですね！　マクシミリアン様が嬉しそうでいらっしゃたのも納得しました。これはもう、長年の悲願だった国交正常化が叶ったも同然ですね」
　……普通に考えれば、そうなるだろう。
　しかし、ガブリエルは良くも悪くも相当に癖のある男だ。奴の心ひとつで交渉の席が実現したわけだが、逆にひとつでも気に入らないところがあれば、「やっぱり国交正常化はなしだ」などと、ぬかさないとも限らない。
「まぁ、そうなるように力を尽くすさ」
　俺は嬉しさに勝るとも及ばない気の重さを自覚しながら答えた。
「これから歓迎準備で忙しくなりますね。マクシミリアン様が不足なく過ごせるように、僕も今まで以上に頑張ります！」
　キラキラと目を輝かせるヴィヴィアンを前にして、一生懸命な姿が可愛いと思った。
　よく動き、よく笑う。彼が来て、俺の窮屈な日常までが色づいていくかのようだった。これからも彼が、ずっと俺の隣で笑っていてくれれば……。