獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

「ぇえええっ!?　マジかよ!?」
　素っ頓狂なふたりの叫びを背に、私は大荷物を手に皇宮の廊下をズンズンと進んだ。
「まぁっ、ヴィヴィアン様ですわ！　今日もなんて凛々しいお姿なのでしょう！」
「ヴィヴィアン様ったらあの細い体で、あれだけの荷物も危なげなく運んでおられるわ！」
「私、ヴィヴィアン様の肩に担がれている荷物になりたいですわぁ……」
　しばらく廊下を行くと、向かいから懇意にしている女官の女の子たちがやって来る。私に気づくと、彼女たちは頬を染めて口々に囁き合う。
　その姿はまるで、小鳥たちが囀っているかのよう。ふふっ、いつの時代も女性というのはなんとも可愛らしいことだ。
「あ、あの！　ヴィヴィアン様、よろしかったらそのお荷物を運ぶのを手伝わせていただきますわ！」
　輪の中からサリーがタタタッと前に出てきたと思ったら、両手をキュッと前手に握り締め、震える唇で口にした。
「まぁ!?　サリーったら抜け駆けですわ！　それでしたら、私だってヴィヴィアン様のお手伝いがしたいですわ！」
「私も！」