獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「あのなよなよしい近習、ポッと出てきたと思ったら陛下に巧いこと取り入って気に食わねぇぜ! その上ちょっと顔がいいからって調子にのって、皇宮の女たちにファンクラブなんて作らせやがって」
 え? ファンクラブ!? 廊下の角から聞こえてきた男性の声にピクリと肩が揺れる。
 これは初耳だった。
 この一週間ですっかり懇意になった皇宮女官の女の子たちの可愛らしい笑顔を思い出せば、自ずと頬が緩む。私は彼女らとの初対面に思いを馳せた――。

 あれは勤務初日のこと。
 勤務中、私はこちらをチラチラと見つめては、囁き合う女官たちの愛くるしい視線に気づいていた。
『はじめまして、皇宮に花を添える麗しいレディたち。今日からマクシミリアン様の近習を勤めるヴィヴィアンだ』
『まぁ! ご丁寧に、ヴィヴィアン様とおっしゃるのですね。私はサリーですわ』
『はじめまして、ヴィヴィアン様。私はアンナです』
『私は――』
 早速休憩時間に声をかければ、あっという間に私の周りには女官たちの輪が出来上がった。