獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「陛下の鎧を衣裳部屋へ運んでおけ!」
 返事をするやいなや、いきなり数日後の軍事式典でマクシミリアン様が着用する予定の重さ十五キロの鎧を、予備も含めてふた揃い積み上げられる。
「承知しました!」
 私が是と答えれば、皇宮侍従の男性は嫌味っぽくフンッと鼻を鳴らして消えた。
「おい、ヴィヴィアン!」
 直後、別の皇宮侍従の男性に呼びかけられた。
「はい」
「陛下に目を通していただく書類が入ってる。政務室まで運んでおけ!」
 またしても特大の木箱ふた箱が目の前に積み上げられる。
「かしこまりました!」
 こちらも私が了承すれば、皇宮侍従の男性は小馬鹿にしたようにフッと口角を歪めて消えた。
 ふむ、これは結構量があるぞ……って、なになに? 近習としての仕事は本当に順調なのか。同僚の男たちに意地悪されて重労働を押しつけられているんじゃないかって?
 いやいや、そんなことはない。誰がなんと言おうとこの上もなく順調だ。