……そりゃ、そうだ。マックは前世の飼い猫だもんね。
 それにしたって、あのモフモフ虎柄尻尾、懐かしいなぁ。束の間の物思いから意識を今へ戻した私は、空っぽの手のひらを握り締め、愛猫のモフモフ質感を懐古した。
 そうして視線を前に移すと、姿見の中の少年と目が合った。
 ヴィヴィアン・モンターギュ、今世の私だ。
 前世の日本で、演者が女性だけという珍しい劇団に所属し、男役スターをしていた記憶を持つ転生者でもある。
 かつての私は、”男役”を天職だと思っていた。ところがヴィットティール帝国に転生を果たした今、”男役”は職業どころの話ではなくなって久しい。
「……これはもう、ライフワーク?」
 姿見の中の少年がさくらんぼの色をした唇を薄く開き、コテンと小首を傾げる。
 少年は、金糸を紡いだような艶やかな金髪に秀でた額、スッと通った鼻筋に凪いだ湖面と同じ澄みきったブルーの瞳をしている。十人に聞けば十人が口を揃えて「超イケメン!」と叫ぶ白皙の美少年だ。