獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 現れた陛下は午前の謁見に備え、カッチリとした詰襟の正装に身を包んでいた。その頭部には、今日もしっかりとターバンが巻かれている。
 威風堂々とした陛下の姿に、意図せず鼓動が跳ねた。
「マクシミリアン様。食堂までお供させていただきます!」
「……」
 扉の横からひょっこりと顔を出した私を、マクシミリアン様は少し驚いた目で見つめていた。
「さぁ、参りましょう。まだスープも温かいはずです。スープは温かい方が断然おいしいですから」
 廊下の置時計は、六時十五分を少し過ぎたところ。私はわざと軽い調子でスープを話題にあげて微笑んだ。
 私は廊下でマクシミリアン様を待ちながら決めたのだ。
 このお方は皇帝という立場で常に難しい判断を迫られ、神経をすり減らしながら過ごしている。だから私はどんな時も一貫して朗らかでいようと。
 これから先どんな状況になっても、そこだけは絶対にブレない!
「……そうだな。温かい方がうまいというのは同感だ」
 ヒラリとマントを翻し、マクシミリアン様が私の一歩前へと踏み出す。
「急ぐぞ。冷めてしまうのだろう?」