尻尾を撫でられてちょっと不満げなマックをモフりつつ、おもむろに棚からブラシを取り上げる。マックはブラシを視界の端に捉えた瞬間、不満顔から一転し、瞳をキランッと輝かせた。
 マックはブラッシングされるのが大好きなのだ。ところが、私以外の人がブラシをあてようとすると暴れて嫌がる。
 どうやらマックがブラッシングを許すのは私だけらしい。飼い主として密かに嬉しかったりする。
 私が首後ろにブラシをあて、毛の流れに沿って梳かしてやると、マックは目をとろんと蕩けさせ甘えた鳴き声をあげる。
「ふみゃ~~(もっと~♪)」
 夢心地に浸り切った顔をして、「もっと~」と強請るようにスリスリと体をすり寄せてくるマックは猛烈に可愛いくて、私を虜にする。
 ……くぅ~っ! モフモフ、超最高ーっ!
 心のままモフモフを堪能しながら、愛猫との蜜月ライフに蕩けた――。


 手指を握ったり開いたりしながら、そっと瞼を開く。
 残念ながら私の手の中にモフモフのマックはおらず、手のひらは虚しく空気を揉んでいた。