獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 前皇帝陛下によく似た粗削りだが、彫りの深い整った美貌。瞳は太陽より眩しい金色で、ターバンの下から覗く頭髪は艶めく射干玉の黒。その表情は鋭利に研ぎ澄まされ、隙や甘さは一切ない。長身の体躯は着衣越しにも筋肉がしっかりとつき、鍛え上げられているのが分かった。とにかく陛下の立ち姿は王者の風格に溢れ、見る者を圧倒した。
 だけど、それらを超えて私の目も心も一瞬で釘付けにしたのは、あの太くて長いモコモコの尻尾!
 クッキリと虎模様の入ったあの尻尾、柔らかでモフモフで素敵だな~。いつかまた、触りたいなぁ~。
 いやいや、いつの日か絶対にモフってモフってモフり倒してやるぞ!っと、こんな恐れ多い脳内妄想に明け暮れて、結局この日は荷物が片付かぬまま幕を閉じた。


 翌朝。
 ――コンコンッ。
「陛下、おはようございます!」
 陛下の寝室の前でノックと共に声を張る。しばらく待つが、中から一向に返事はない。
 廊下の置き時計は陛下の起床時刻である午前六時を指している。