獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 ……俺に言わせればよく似た姉妹で、ふたりともどこまでも規格外だ。
「俺たちの部隊がお前の救出を引き継ぐと、彼女は『ならば私はやることがある』と漁港の方向に馬首を返した。急場につき、それ以上詳細を問うことはできなかったが」
「そうだったんですね……」
「それから、この手紙を届けたという少女について彼女から伝言を預かっている。なんでも『すっかりうちのセンター長と意気投合して、今後はうちで秘書として働くことになったから安心していい』だそうだ」
「……まさか、そんなことに」
 パチパチと目を瞬かせるヴィヴィアンがなんとも可愛らしく、思わずフッと笑みがこぼれる。
「素晴らしい姉を持ったな。では、お前も帰り支度を急げよ」
 名残惜しくも最後にポンッと頭をひと撫でし、帰宮の指示に移るためヴィヴィアンとハミルを残して踵を返した。
 そうして俺が扉の外に踏み出しかけたところで、ハミルがヴィヴィアンの袖を引くのが横目に移った。
「ヴィヴィアン、今回の一件では色々と迷惑をかけてしまったね。改めてお詫びを言わせて……本当にごめんなさい」