獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 太陽が俺たちの、そしてヴィットティール帝国に住まう全ての民の頭上を照らす。その立場が変わっても、俺とハミルが見つめる景色は同じ。
 ヴィットティール帝国に悠久の安寧を――。
 俺たちは晴天を見上げ、眩い陽光に願った。

 その後は、すぐにハミルの捜索にあたらせていたカロスら部隊員を招集し、皇都への帰還に向けて慌ただしく動き出した。
「隊列が整い次第、至急皇都に向けて発つ。俺は指揮に戻るが、お前も帰都のための身支度を整えておけ」
「はい、陛下」
「それからヴィヴィアン、ここに来る途中でマリエーヌに会った」
「姉様に!? まさか姉様本人が鮮魚センターにいたなんて……!」
 驚きに目を丸くするヴィヴィアンに、懐から彼女が姉にあてて認めた手紙を取り出した。
「俺が真っ直ぐにこの部屋に踏み込めたのは、これを携えた彼女と行き合ったからだ。大量の火薬武器を積み込んだ早馬を駆る彼女と合流できたのは、不幸中の幸いだった」
「なんてこと。あと一歩マクシミリアン様の到着が遅ければ、ここは灰になっていたんですね」