そうしてついに大柄のシルエットが窓を飛び越え、床に散るガラスを踏みながら室内に降り立つ。途中で一度窓の外を振り返り、頷くような仕草をみせ、その人はすぐにまた私へと向き直った。
 ……うそ、どうしてここに?
 朝日に照らされた彼の顔を目にした瞬間、眦からツーッと一滴、熱い物が頬を伝い顎で珠を結ぶ。しかし膨らんだ雫が落ちる直前、私は逞しい腕にグッと抱き締められていた。
 驚いて見上げるよりも先、厚い胸に顔面が押しあてられ、涙は見慣れたマントに吸われて消える。
「無事だったか、ヴィヴィアン!!」
 皇太后様から聞かされた通りなら、彼は今まさにとても厳しい局面に立たされているはず。その彼がここにいるのはおかしい……。
 だけど頭上から響く熱の篭もった声を耳にして、頭が真っ白になった。考えるより先に、五感の全てでマクシミリアン様を感じていた。
「薬で眠らされ、目覚めないと聞かされた時は胸が潰れそうな思いだった! 無事で、本当によかった!」