「はい。そして儂にも皇太后陛下に与するべきだとしきりに誘ってきました。ちなみに皇太后陛下の指示というのは、弁の立つリーダーを各地に送り込み、抗議集会を扇動するというとても単純なもの。しかし問題はその弁で、今回のアンジュバーン王国との交渉中断以外にも、各領内で発生する小さな小競り合い、果ては冷夏による麦の収穫減少まで陛下の悪政のせいとかこつけた主張を展開しています」
「そうか。だが、筋の通らぬ主張を国民が信じてしまうなら、それもまた俺の政治成果ということになるのだろう。財務大臣よ、カロスにも言ったが、俺はこのままではおかない。国立研究所襲撃における皇太后関与の証拠は既に揃っているし、今この瞬間も皇太后周辺の洗い出しは着々と進んでいる。地方創生大臣の不正についても同様に証拠を得ている。ヴィヴィアンを救出して戻った時、俺はこれらの証拠を手に、皇帝として揺るがぬ意思をもって国民の前に立つ」
 財務大臣は眩しいものでも見るように目を細くして俺をあおぎ、次いでスッと直角に腰を折った。