獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 必死に口にしながら、自分自身の台詞にどことなく既視感が浮かぶ。つい最近これとよく似たような台詞を聞いたような気がしたが、思い出すには至らなかった。
 侍従長は私の言葉に目を瞠る。チラチラとこちらを気にしていた女官や近衛兵らも、揃って目を丸くしていた。
「はははっ! これは驚いた。吹けば飛んでしまいそうな華奢でなよなよしい見た目に反し、存外に図太い!」
 うん? これは、褒められているのか? ……いや、普通に考えれば「なよなよしい」も「図太い」も誉め言葉ではないが。
 突然砕けた笑みを浮かべ、ざっくばらんに私を評す侍従長に、思わず首を捻った。
「ええっと……」
「いやいや。白状すると私も陛下と同様、あなたについては少々心配していたんだ。だが、なかなかどうして。意外とあなたのようなタイプが、あの方の近習には向いているのかもしれない」
 侍従長の抽象的な物言いは、正直よく分からなかった。
「付いて来なさい、あなたがやるべき仕事を説明します。ただし、二度は説明しませんから、そのつもりで」
「は、はい!」