嘘でもアンジュバーン王国行きを了承するのは、胸が万力で締め付けられるような苦しさを伴った。
「……ただ、今は頭が痛くて。少し休ませてはいただけませんか? 詳細は明日、改めてお聞かせいただけたら……」
私は、演技をするまでもなくカタカタと震える指先を胸元で握り締め、喜色で声を弾ませる皇太后様に乞うた。
「たしかにひどい顔色ね。薬が体に合わなかったのかしら。……まぁいいわ、詳しい話はまた明日、改めましょう。それから、外には見張りを立たせているから、ここを出ようだなんてゆめゆめ思わないことね。万が一そんな素振りを見せたら即刻海に沈めてやるから、いいわね?」
出難い声に代わり、コクコクと首を縦に振ることで了承の意思を示す。
皇太后様が出ていった室内で、私はひとりまんじりともせず夜明けを待った。
***
俺は政務室の窓の前に立ち、太陽に取って代わるように空の主役になりつつある星々を睨みつけていた。
ヴィヴィアン主演の観劇に感嘆の拍手を送っていたのが、まるで遠い昔のことのようだった。
「……ただ、今は頭が痛くて。少し休ませてはいただけませんか? 詳細は明日、改めてお聞かせいただけたら……」
私は、演技をするまでもなくカタカタと震える指先を胸元で握り締め、喜色で声を弾ませる皇太后様に乞うた。
「たしかにひどい顔色ね。薬が体に合わなかったのかしら。……まぁいいわ、詳しい話はまた明日、改めましょう。それから、外には見張りを立たせているから、ここを出ようだなんてゆめゆめ思わないことね。万が一そんな素振りを見せたら即刻海に沈めてやるから、いいわね?」
出難い声に代わり、コクコクと首を縦に振ることで了承の意思を示す。
皇太后様が出ていった室内で、私はひとりまんじりともせず夜明けを待った。
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俺は政務室の窓の前に立ち、太陽に取って代わるように空の主役になりつつある星々を睨みつけていた。
ヴィヴィアン主演の観劇に感嘆の拍手を送っていたのが、まるで遠い昔のことのようだった。



