こんな前置きをして、皇太后様はなんら違和感なく話し出す。流麗に紡がれる言葉に耳を傾けていると、ともすれば一連の犯罪行為こそ正義であるかのように錯覚しそうになる。
それくらい、彼女の言葉には真摯な親心が滲んでいた。しかし話が進むにつれ、彼女の異常性が浮き彫りになってくる。
私が眠りについてから既に三日が経っていること、視察中の国立研究所内でふたりが襲撃に見舞われたこと、この二点は既にユリアに聞かされて知っていた。皇太后様の手前驚いた素振りこそしてみせたが、私が真に動揺したのはその後に語られた部分……いや、それを語る彼女の喜色あふれる態度だった。
「――そんなわけで、国内ではマクシミリアン廃位の声が高まっている。既に地方創生大臣を筆頭に大臣らの半数程度、加えて識者や有力貴族らもこぞって廃位に賛成の立場を示しているから、ここでマクシミリアンの『耳なし』をカミングアウトすれば廃位はもう確定ね。遠からず愛しいハミルが皇帝となるわ。きっと、ハミルの頭上に金の宝冠はよく似あう。ふふっ、なんて待ち遠しいんでしょう」
それくらい、彼女の言葉には真摯な親心が滲んでいた。しかし話が進むにつれ、彼女の異常性が浮き彫りになってくる。
私が眠りについてから既に三日が経っていること、視察中の国立研究所内でふたりが襲撃に見舞われたこと、この二点は既にユリアに聞かされて知っていた。皇太后様の手前驚いた素振りこそしてみせたが、私が真に動揺したのはその後に語られた部分……いや、それを語る彼女の喜色あふれる態度だった。
「――そんなわけで、国内ではマクシミリアン廃位の声が高まっている。既に地方創生大臣を筆頭に大臣らの半数程度、加えて識者や有力貴族らもこぞって廃位に賛成の立場を示しているから、ここでマクシミリアンの『耳なし』をカミングアウトすれば廃位はもう確定ね。遠からず愛しいハミルが皇帝となるわ。きっと、ハミルの頭上に金の宝冠はよく似あう。ふふっ、なんて待ち遠しいんでしょう」



